こちらの「情熱!U-30」では、長崎で暮らす30歳以下の若者がどのような活動をしているのかを紹介します。
今の若者が熱中していることは何か。
さらに今の若者の価値観なども同時に知ることができますのでぜひご覧ください!
第8回となる今回は、佐世保市干尽町にあるさせぼ競輪にお伺いしました。
させぼ競輪は、1950年、戦後間もない佐世保市で生まれた競輪場で、国内最西端に位置しています。
佐世保駅から無料送迎バスに乗って5分、歩いても約20分で到着する歴史ある競輪場の中で、プロの競輪選手たちが日々競い合っています。
今回はそのさせぼ競輪でLIVE配信・アシスタントとして活動されている山下萌香さんにインタビュー。アシスタントを志したきっかけや、仕事の楽しさ・難しさに迫りました。
【させぼ競輪LIVE配信・アシスタント】
山下萌香さん(19)
出身:長崎市琴海地区
趣味:野球観戦(主に高校・大学)
部活経験:女子バスケ部マネージャー(中学)
アシスタントのお仕事について
— 現在、山下さんが行われているアシスタントのお仕事について教えてください。
山下:させぼ競輪のYouTubeやニコニコ生放送で配信されるLIVE配信に出演しています。着順の予想などは行わず、それ以外の部分【出場される選手名の読み上げ】【配当やオッズの読み上げ】を、こちらの配信スタジオでさせていただいてます。あとは共演者の方々に競輪初心者の視点から「このレース展開はどういうこと?」と感じた疑問など質問を投げかけたりしています。実は今日、それらの仕事に加えて、初めて選手の決勝インタビューに行くんです。緊張する(笑)
—LIVEということで緊張が続くお仕事をされていますね。今回から初の選手インタビューも加わり更に緊張ですね。
山下:そうなんです。LIVE配信中は選手名やオッズを間違えないように集中するので、緊張が少し表情にも出てるかも知れません(笑)。緊張感の中でも共演者の方が笑いで場を和ませてくださるので、毎回、助けていただいてます。今回からLIVE配信の後半に、スタジオを離れて、選手インタビューに行きます。初めて配信スタジオから離れてのお仕事なので更に緊張します。インタビューは後日編集されて、YouTubeに掲載されるんですよ。え、観るんですか?(笑)
— もちろんです!
▼後日のインタビューの様子▼緊張を感じない聞きやすいインタビュー。さすがでした。
地元長崎に貢献できる仕事を探していた
「地元長崎に貢献できる仕事を探していた」と語る山下さん。させぼ競輪のアシスタントを選んだきっかけを振り返ってくれました。
山下:長崎での暮らしは自然もあり、生活する上でも不便がないため満足しています。だから長崎、特に地元が大好きなんです。仕事のために都心部に移動するということよりも、地元の長崎で地域に貢献できるような仕事をしたいと思っていました。そこで興味のあったレポーターやアナウンスといった表に出る仕事を探していました。
— させぼ競輪でのお仕事をどのように見つけたのですか?
山下:させぼ競輪のホームページで、「させぼ競輪アシスタントオーディション」の情報を見つけたんです。本当に偶然見つけました。競輪については全く知らなかったのですが、競輪選手に知り合いがいて、その方の試合を見にさせぼ競輪に行った経験がありました。だから競輪については知らないもののトラックを走る自転車の音など臨場感というものは覚えていました。これも何かの縁だと思い、表に出る仕事をしたいこともあったため、アシスタントに応募をしました。
— 競輪に関してはあまり知らないということで日々勉強ですね。
山下:そうですね。ルールやレース展開などわからないことがあれば共演者の方に聞いたり、共演者同士が専門的な部分で盛り上がってるときなどはわからなくても、そこは笑顔で相槌を打って乗り切ってます(笑)。
— 共演者のMCの大津さん、解説の平尾さんと3人での動画を拝見しましたが、すごく仲良くお話されている印象です。もうすぐ半年になりますが、「変わったな」と思うところはありますか?
山下:この配信に関わってる方々は仲良く、フランクに接してくださるので、非常に助かってます。元競輪トップ選手の平尾さんに、レース展開など初心者の私が質問しても丁寧に答えてくださるってすごいなと思います。半年が過ぎて、いろいろな変化はありました。少しずつアシスタントとしての読み上げなどもできるようになってきました。勉強が必要だと感じることも多く、特に選手の顔と名前が一致しないということもあるので、これからインタビューという新たな挑戦をさせていただく中で選手の顔と名前も覚えていけるようにします。
— 競輪界は、年齢層がかなり広いと聞きました。
山下:そうなんです。若い人だと私と同年代(20歳前後)だったり、逆に上の方だと50代の選手もいらっしゃいます。競輪と関わっていく中で、そのような幅広い年齢の方が現役で活躍されているスポーツということも知ったので、この配信を多くの方に知っていただき、賭け事としてだけではなく、スポーツとしての側面も観ていただける方が増えると嬉しいです。
競輪という未知の世界に飛び込み、日々学びながら、表舞台に立つ山下さん。実は野球観戦が趣味ということを聞いたのでそちらも深く掘り下げてみました。
山下:うちは野球観戦が大好きな一家で、小さい頃から野球中継をテレビで観るということが当たり前でした。その影響を受け、私自身も野球が好きになりました。高校生の時には1人で高校野球の観戦にバスを乗り継いで現地に行ったりもしました。「野球が好き!野球を応援したい!」という思いと、表舞台で活動をしたいという思いもあったので、女子高生が、甲子園を目指す野球部を応援するリポーターに就任!という高校生応援リポーターにも応募をしたこともあります。一次審査は通ったんです。でも二次審査で落ちました。
— なんと!それは悔しい…。
山下:言い方がよくないかもしれないけど、当時は「何でこんなに野球が大好きなのに、落とされないといけないんだ!」って思ったんです(笑)。それからですね。絶対に表に出る仕事をしようって思うようになったのは。
— 反骨心を糧に、競輪の世界に飛び込んだんですね。
山下:そうです。その時の悔しさというものがあったからこそ、今の仕事ができているのかなと思います。競輪は初心者、喋りも初心者ですが、受け入れて頂いた、させぼ競輪さんには感謝してます。
— 今のお仕事で難しいと感じるところを教えてください。
山下:共演者の2人が競輪の展開などについて、熱く語っているときに内容を理解することが難しいです。理解しようと考えすぎて1人ですっごく険しい表情をしてしまったりとか、たまにあるんですよ。「やばい、いま話を振られたらどうしよう!」とドキドキしてます(笑)。
— 2人にはそのドキドキは伝わってると思いますか?
山下:伝わってると思います(笑)。専門用語も出てくるし、レース展開も分からん…ってなってるのは表情で読み取ってもらえてるかもしれません。解説は、競輪そのものに詳しくならないといけないけれど、MCの仕事については都度、相談はさせていただいてます。「こういう時、どうしますか」って。レースの合間はもちろん、LINEでも教えていただけるので、本当に助けられています。
— 非常にいい環境ですね。
山下:そうなんです。これ、すごい経験ですよね(笑)。
終始笑顔でインタビューに答える山下さんは、アシスタントの「難しさ」すらも楽しんでいるように映りました。最後に、山下さんが思う「競輪の魅力」に迫りました。
— 中継の楽しさを教えてください。
山下:ここに座っているだけでも、すごく楽しいんです。競輪のことはまだまだ勉強しないといけないけど!(笑)。それでも、自分がやりたいと思える仕事ができているし、選手と話せる機会もいただける。「仕事として選手と関われている」という実感を、すごく感じています。
— 山下さんが思う、競輪の魅力を教えてください。
山下:今はスタジオでのお仕事なのですが、生で観る迫力が一番です。画面越しでは聞こえない自転車の音、お客さんの歓声、そういうところに魅力を感じます。ガールズのレースでもスピードが速いので、音が本当に凄く迫力があります。ぜひ、スポーツとしても競輪を観に来てほしいんです。
— 山下さん自身は、自転車に乗る体験などはしないんでしょうか?
山下:私、自転車乗れないんですよ(笑)。
— アシスタントが自転車に乗れるようになるまで!みたいな企画、やってみたらどうですか?(笑)。アシスタントの登竜門というか、自転車に乗れない人たちが競輪に興味を持つきっかけにもなりそうです。
山下:自転車に乗れるようになれるといいな(笑)。あと、方言が治らないです。みんなから「もういいよ、このままで」って言われました(笑)。たまに視聴者の方からTwitterで突っ込まれるんですけど、長崎生まれ長崎育ちだからしょうがないやんねぇって開き直ってます(笑)。
— それもさせぼ競輪の魅力になるかもしれないですね。アシスタントは長崎訛りっていうのも親近感が湧くかと思います。これからの活躍も楽しみにしています!インタビューありがとうございました。
山下さんの価値観を知るために「エンゲージメントカード」
ここからは、この『情熱!U-30』の企画で恒例の「エンゲージメントカード」で、山下さん自身が大切にしている価値観を探りました。
「私、いい人ぶってる…?」と、戸惑い気味の山下さん。迷いながらも、最後に残った価値観カードは次の3枚。
愛、義理人情
私は、相手がいないと何もできない人。この仕事もそうだけど、観てくれる人と作ってくれる人がいるから、できてるなっていうのは、強く感じてます。
慎重
これは性格なんです。ひとつのことに対して、凄く考える。それが良かったり悪かったりします(笑)。
山下さんとのインタビューでも時折、考える仕草や間もあって、インタビューでも考えながら受け答えをしていただいてるなと感じました。選ばれた価値観3つ愛、義理人情、慎重はインタビュアーからしても納得しました。
番外編:共演者の2人。平尾さん、大津さんにもインタビュー
平尾昌也さん(写真左)
長崎県出身の元競輪選手。させぼ競輪LIVE配信では、解説を務める。
大津尚之さん(写真右)
広島県出身。競輪実況、キャスター、司会・MCなど幅広く活動中。させぼ競輪LIVE配信では、MCを務める。
今回、取材にお邪魔した日は平尾さんの名前に由来する「ヒラマサカップ」の期間中。「みんなはポンコツカップと言うんです」と笑う平尾さん。それに負けじと「生放送中に下ネタを言う、唯一の競輪場です」と話す大津さん。いきなり暴露話から入り、笑いに包まれて、和やかな雰囲気に。改めて、山下さんが話していた”いい環境”というものを感じられました。
— 山下さんの印象をお聞かせいただけますか?
平尾:若い彼女がこの門を叩いて来た時に、大丈夫かな?って心配がありました。蓋を開けると、仕事に向かう姿勢や共演者との会話などすべてにおいて、しっかりしていて驚きました。
— 特にどのような時にしっかりしていると感じますか?
平尾:彼女との会話で過去の話とかもすることがあるんですが、高校生の時からアルバイトをして、頂いたお金で母親へのプレゼントを買ったり、高校野球観戦に一人で行ったり、自分のしたいことは自分でするという彼女の考え方がしっかりしてるなと思いました。僕の高校時代を思い返すと、親の脛をどんだけかじりよったって少し反省してます(笑)。
大津:僕なんて、30過ぎてもかじってますからね(笑)。
平尾:本当にしっかりしてる。その芯には度胸があるんですよ。10代の子がここに座って、いきなり笑って話せませんよ。僕から言わせてみれば、それだけでもすごく魅力のある人だなって思いましたね。
— 彼女が座るようになって、雰囲気も変わりましたか?
平尾:配信中のコメントも増えてね。やっぱり、おっさん2人で話すより華がありますよね。
大津:純粋で、勉強熱心ですしね。吸収力もある。
平尾:ただ、僕と一緒で方言が取れない(笑)。それ以外は完璧です!
— あと、自転車に乗れないらしいです(笑)。ぜひ、企画にしてください。
大津:企画、それいいですね!
平尾:この人(大津さん)も競技用自転車に乗って、ひいひい言いよったけんね(笑)。
大津:僕も実は競技用自転車に乗らせていただいたことがあるんです。その時は、僕の気持ちは70km/hくらい出てるつもりで自転車を漕いでました。ただ、後ろを見ると選手がランニングしてました…。
— 山下さんご本人が「スポーツとしての競輪を楽しんでほしい」と話されていました。自転車って、五感で感じられるスポーツだとおっしゃられていましたがどうですか?
大津:いいこと言いますね!競輪は現地に来れば、選手が全速力で駆け抜ける音であったり、自転車が過ぎたあと車輪の擦れた匂いなども感じられます。彼女は、野球も好きでしたよね。実はこの世界は、球界から入ってきた人やJリーグ経験者もいるんですよ。いろんなバックグラウンドを持った選手が多いのも競輪の魅力ですね。
平尾:参加してる選手に石を投げて、当たった人は何かしらのスポーツの分野で活躍していたトップクラスの選手。自転車は誰でも乗れるから、別のスポーツからの転身ということがよくあります。そのため自転車部のインターハイチャンピオンが競輪学校に受からない……なんてこともあるんです。だから、競輪学校で「自転車部だった」って自慢にならないんです。
大津:最近はSNSをやってる選手も多いので、そのような情報も知ることができますよ。この選手はサッカーから転身したんだとか、へー釣りが好きなんだとか知ることでより応援したくなることもあるかと思います。
— 山下さんがアシスタントとして加わり、彼女が発信していくことで、いまの学生たちに届き、そのような選手の背景を知れると「自分は野球部だから関係ない」じゃなくなるかもしれないですね。
平尾:そうなってもらえると競輪界としても非常に嬉しいです。弱虫ペダルって自転車漫画を読んでみると分かりますが、「まさかあの人が?」という人が競輪のトップ選手として活躍するなんてことがあるのが、自転車の世界。
大津:若い世代でも、自転車一筋でプロになった選手もいれば、野球から転身してプロになる選手もいます。そしてデビューから数年で稼げる選手もいます。ケガさえしなければ60歳になっても戦えるし、幅広い年齢で活躍できるスポーツそういう意味では夢がありますよね。
平尾:ネット配信も普及して、競輪界も盛り上がってきました。ネット配信も一昔前は淡々とレース展開を解説するようなものだったのですが、させぼ競輪では、多くの方に観てもらえるように、笑いもあるようなフランクな配信をやってます。アシスタントとして山下さんが入っていただいたことは競輪を多くの方に知ってもらうという意味でも本当にプラスになってると感じます。先程も言ったけど、スタジオが明るくなったのは嬉しいです。
大津:私達もネット配信という中で、幅広い方に観てもらいたいという思いがあり、先程、平尾さんもおっしゃられていたように、笑いがあり、和やかな雰囲気での配信を意識して行っています。「させぼ競輪のネット配信は面白いから観る」という方も増えてもらえればありがたいです。「山下さんのファンだから観る」という方が増えても嬉しいです!
「様々な世代に競輪を楽しんでほしい」と願う平尾さん・大津さん。そして、そんな動きが加速する中でアシスタントに抜擢された山下さん。試行錯誤を繰り返す3人が創りだす空間は、明るい笑顔と見えない努力が溢れていました。
出かけられない今はさせぼ競輪をネット配信で観ませんか?
そして、出かけられるようになった際には、させぼ競輪に行きませんか?