こちらの「情熱!U-30」では、長崎で暮らす30歳以下の若者がどのような活動をしているのかを紹介します。
今の若者が熱中していることは何か。
さらに今の若者の価値観なども同時にを知ることができますのでぜひご覧ください!
記念すべき第1回の記事は、長崎市三重地区にある長崎大学大学海洋未来イノベーション機構の環東シナ海環境資源研究センターで「イセエビ」の研究を行っている長崎大学大学院1年生の中野豪さんへの取材をさせていただきました。
海の生き物を研究する方々が集まる環東シナ海環境資源研究センター
今回のインタビューは長崎市の漁業が盛んな町、三重地区にある環東シナ海環境資源研究センターで行いました。まず、実際にお訪ねさせていただき、驚くのはこちらの船。
長崎大学ではこちらの船で実際に沖に出て、海洋調査など研究を行っているそうです。長崎には豊富な魚種が存在するなど長崎でしかできない研究が多く存在するということも聞きました。
このような大きな船があることで研究に適した環境が長崎にあるということは全国にもぜひ知ってほしい事実です。(海洋未来イノベーション機構の詳細はこちら)
長崎大学大学院1年生の中野豪さん
- 岐阜県出身
- 1996年生まれ24歳
- 趣味:ツーリング、登山、釣り
現在、長崎大学大学院でイセエビの鳴き声を研究。イセエビがいつどんな時に鳴くのかを調査することで、海にイセエビがどのくらい生息するのかなどを捕獲をせずとも、音で知ることができるようにしたいという目標を持って活動を行っている。
研究室へ向かうと、早速、中野さんが出迎えてくださり、環東シナ海環境資源研究センターを案内していただきました。案内だけでも研究センターが楽しそうな場所だとわかりました。
さらに中野さんとのお話から学生の普段の生活の感じが見え隠れしていて非常に面白かったです。イセエビの奥深さを語る中野さんは魅力あふれる方でした。
【きっかけを探る】イセエビ研究を始めたきっかけは意外だった。
施設を案内してもらう際に、中野さんがイセエビ研究に至ったまでの「きっかけ」を伺いました。海のない岐阜県に生まれた中野さんは海への興味、特に海に住む生物への感心があり、進学する時には海の生物を研究してみたいという思いから、長崎大学水産学部への入学を決心したそうです。海のない県に生まれたからこそ、海への強い憧れや興味から長崎大学への進学を決めたというのはドラマを感じます。その受け皿に長崎大学水産学部がなっていることもいいですね。
さらに、なぜイセエビ?という今の研究に対して質問をしました。
「海の生物には全てに興味があって、研究する対象はどれでも良かったのですが、イセエビを研究するとイセエビが食べ放題になるという話を聞いてイセエビに決めました。いざイセエビ研究を始めたら、イセエビは食べ放題ではなかったです。笑」
研究のイメージは「私はこれをする!」という強い意志の基スタートすると思っていたので、イセエビ食べ放題というところからイセエビ研究が始まったというのは意外です。今後、イセエビ研究が進む中で、このようなきっかけを語ることができるのは、中野さんの強みで、研究の入り口は「イセエビ食べ放題から始まった」と言うと将来の研究生もほっとするかもしれないし、自分も研究してみようかな、と言う学生も増えるかもしれないですね。中野さんの今に至るまでのきっかけ、非常に面白かったです。
研究センター内にはサッカーのユニフォームも
研究センターの衣類が並ぶ場所には、作業着や長靴が並ぶ中に、サッカーのユニフォームやスパイクなども置いてありました。研究室の学生同士で休み時間などに近くの運動場でサッカーをプレーしているそうです。研究だけでなく、楽しんでいる感じが見て取れるのがいいですね。また、サッカーは学生だけでなく隣の長崎県水産試験場の研究者の方とも合同で試合をしているとのことでサッカーを通して交流をしているのもいいですね。
ちなみに中野さんは多趣味で、休みの日はバイクでツーリングをしたり、登山をしたりとかなりアクティブ。私との出会いも琴海で行っているテントサウナという体験に来ていただいたことがきっかけでした。この記事の最後にはそんな中野さんの価値観にせまってみたいと思います。まずはイセエビについてのご紹介。
研究室の裏手には多くの水槽が立ち並ぶ。
中野さんのイセエビ研究までのきっかけをお伺いしながら、施設を歩き、まず最初に案内されたのが、研究室の裏手にあるこちらの水槽が並ぶ場所。こちらの水槽では研究者が各々の研究したい魚などを飼育し、観察しているそうです。
研究生の皆さんはもれなく釣り好きで、研究センターの目の前の海岸で釣りをして、自らの研究のための魚を釣り上げたりするということ。研究対象を自らで釣り上げることができるのはさすがは釣り好きだなと思います。
各水槽を見て周っていると一番手前の水槽のフチにイセエビを発見。
こちらは今朝取れた、イセエビの脱皮後の殻だそうです。
「実はイセエビって背腸ごと脱皮する生き物なんですよ。内臓も新しくなるんです。2ヶ月~1年に1回はこのように脱皮をするんですよね。」
そういう知識を淡々と語る中野さん。
その後も、全ての水槽にいる魚の説明や装置なども詳しく説明してくれて、水槽を見て回るのが非常に楽しかったです。
「イセエビは背腸ごと脱皮するから内臓も新しくなる。」
これはどこかでウンチクとして語るためにスマホにメモを残しました。笑
手作り撮影用ブース
続いて案内されたのがこちらの黒い蚊帳で囲まれた場所。
実はこちらの場所は、中野さんがイセエビの鳴き声を採取するために作ったオリジナルの撮影ブースです。水槽には大きな窓があり、カメラで伊勢エビの行動が記録されています。
イセエビの姿がはっきりと映るこちらの水槽で、日々、イセエビの鳴き声の採取を行っています。鳴き声を発した際にどんな行動を取ったかを撮るために、側面と真上にカメラも設置されています。こちらのブース、単管パイプやライト、カメラの設置場所などは結束バンドなどを用いて自らでDIYして作成したということでいろいろ試行錯誤のあとを見ることもでき、研究者の努力が伝わりました。
午後3時、鳴き声採取に取り掛かる。
研究中は毎日午後3時からイセエビにマイクを取り付け、鳴き声を調査。
イセエビの背中に結束バンドでマイクを取り付けます。
先ほども述べたように、イセエビは脱皮を繰り返すため、背中にマイクを直接取り付けるとマイクが脱皮後になくなってしまうこともあるので、背中に接着剤と結束バンドが通るようにストローを上下に取り付け、イセエビの背中からマイクの取り外し可能な状態に創意工夫が施されています。
逃げるイセエビに屈することなく、マイクを付ける中野さん。
マイクを付けたイセエビを水槽に放し、行動を記録するために、カメラを設置。
これらを毎日行い、イセエビの鳴き声と行動を採取しては、研究室で音声データを取って、どういった時にどのような行動をしているのかをチェックするそうです。地道な作業ですが、未知を知ることができるようになるのは楽しそう。
今後は、イセエビの水槽に天敵のタコを入れるとどのような行動をとり、鳴き声を発するのかなども調査予定とのことで、常に因果関係を見つける作業を行っています。
このような研究の作業工程は、仕事に置き換えてもトライアンドエラーの繰り返しなので非常に重要な要素が養われるなと感じました。研究を行ってきた人は仕事の際にもちょっとした変化に敏感に気づける人なのかもしれませんね。
さらにはこのタコも研究のために自らで釣り上げてくるなど、ないものは自らで取ってくる、作るということを実践されていることも仕事でも活きる能力だなと感じました。
最後になぜ、イセエビの鳴き声を研究するのか。
施設を案内いただいた最後に、なぜイセエビの鳴き声を研究するのかという、質問をさせていただきました。
「イセエビの生態の基礎研究はもちろんなのですが、イセエビの鳴き声や鳴き声を放つ時の行動を調査することで、海でイセエビを捕獲して生息量を計るということをしなくても、海にマイクを入れるとその海にイセエビがどのくらい生息しているのかなど把握できるようになるのではないかと考えています。」
と回答をいただきました。海にマイクを入れるだけで、その場にイセエビがどのくらい生息しているのかを知れるということが実現すれば、調査にかかるコストも大幅に下がるし、海の生物の生活を害することなく調査ができるという点において、一石二鳥ですね。
中野さんの価値観を知るためにカードゲームを実施
施設案内とイセエビに関してインタビューをさせていただいた後に、こちらのエンゲージメントカードというカードゲームを使って、今回インタビューをさせていただいた、中野さんが大事にしている価値観は何なのか?というものを可視化してみました。(エンゲージメントカードについてはこちら)
自分と対話しながら価値観を発見することで自分らしさを理解できるこちらのエンゲージメントカード。それぞれのカードに「ポジティブさ」「責任感」「計画」「楽観主義」など様々な価値観が記載されていて、山札から一枚ずつそれらの価値観が書いてあるカードをめくり、自分が大事だと思う価値観を手札に7枚残し、あとのカードは捨てていくというゲームです。
結果、手札に残ったカードに書いてる価値観を自分は大事にしている価値なんだと気付けるゲームとなっています。
チームでそれぞれのメンバーの大事にしている価値観などを知ることができるようなカードゲームになっているので、相互理解などが必要だなと感じる際などはぜひこちらのカードゲームを行ってみてはいかがでしょうか。
早速エンゲージメントカードをやってみる。
早速、エンゲージメントカードゲームをやってみました。
手元には7枚しか価値観を置けないため、悩みながら、手元に残すカードを選定していきます。悩みすぎず直感で、カードを選択することも大事なので、10秒以内でカードを選定。約10分間この作業を繰り返し、中野さんが選んだ価値観が以下の7つです。
- 成長
- 責任感
- 謙虚
- 好奇心
- 自律
- 冒険
- 知恵・賢さ
これらの7つの価値観から中野さんの大事にするものが見えてくるかと思います。さらに3つの価値観を選んでいただき、なぜそれを選んだのかを答えていただきました。
選ばれたのが好奇心、知恵・賢さ、自律の3つの価値観
好奇心
常に知らないことに興味を持ったり、実際に知らないことを体験するなど好奇心を持ち続けたいと思う。冒険や成長という言葉を最後の7枚まで残したのも、好奇心と似ていて重要な価値観だと思いました。
知恵・賢さ
自分にも必要だし、他人にも自分が求めてしまう要素。研究にしても、0から生み出すは無理だと考えている。まず先人がやってきたことを学んで、先人からの知恵を借りた状態で、自分が何ができるかを考えるのを大事にしています。。
自律
自分がそうでありたいのは、話す時などもその時の感情に任せずに、自分の意志を自分でコントロールした状態をキープして話をするということ。感情的に語りかけるというよりも、論理的思考で話を進めたいので、自律を大事にしたいと思います。
以上のように回答をいただきました。
このカードゲームを通して、中野さんが選ばれたカードは第3者を必要としない価値観、一人称で成り立つ価値観が揃っていることから、自分自身に対することを非常に大切にしているということがわかりました。同時に好奇心や冒険、成長を求められていることから、登山やツーリングという新しい場所に行くことが好きなことも納得がいきます。
エンゲージメントカードで、より中野さんを知ったところで、今回の密着は終了。
今回の情熱!U-30では、長崎大学大学院1年生でイセエビの鳴き声研究を行う、中野豪さんの研究を取材させていただき、イセエビの鳴き声研究を始めたきっかけや、実際に研究をどのように生かしていきたいかなど、ご自身の活動について話していただきました。
24歳の中野さんが大事にされている価値観をカードゲームを用いて見える化することで自身の大事にしている価値観を改めて言語化までしていただきました。
この記事を読んで「今の学生はこのような活動をしているんだ。」「こんな価値観を持って行動しているんだ。」というように、情熱U-30から新たな発見や気づきを得ていただけたら幸いです。
今回の取材から長崎の水産業への興味を持つことができました。取材に全面的に協力いただいた中野さんと環東シナ海環境資源研究センターの皆様ありがとうございました。